欠点だらけの満足感~『シン・仮面ライダー』感想

先週の最速上映で『シン・仮面ライダー』を見てきた。どう考えても欠点だらけの映画なのだが、エンディングを見終えたとき不思議な満足感を覚えていた。100点満点でいえばマイナス100点なのだけど最高の映画だった。

ショッカーの運営はいい加減で、怪人がそれぞれ好き勝手やっているというカオス。しかも怪人に選ばれるのは社会不適合者ばかりなので怪人たちの計画も穴だらけ。でも、それでこそ『仮面ライダー』だという作り手の熱い主張がある。戦闘のCGも安っぽいのだが、この安っぽさですら番組の原典を再現するためではないかと思えてくる。

『シン・仮面ライダー』が気に入ったのは、『シン・ウルトラマン』のときに感じた不満が解消されていたからだ。『シン・ウルトラマン』はマニア向けと一般向けの両立させようとして中途半端になってしまっていた。ところが今回は、完全にマニア向け、普通の映画を求めている人はお断りというテイストがはっきりしていた。そこが良かった。

ストーリーの筋は単純なのだが、独特のカット割りや会話のテンポ、TV版や漫画版を再現したシーンがいくつもあるなど、普通の映画に慣れきった人がこの映画を味わい切るのは不可能だろう。ディズニーが作るマーベル映画のアンチテーゼともいえる内容だ。

しかし、だからこそ『シン・仮面ライダー』は万人が見るべき映画だ。この映画を見ることで、世の中には普通ではない、何か尋常ならざるものがあるのだと実感してほしい。『シン・仮面ライダー』は「普通」を信じて疑わない人をライダーキックで蹴りつける作品だ。