人生で初めて英語の本に手を出した。その本はSaifedean Ammousの『Principles of Economics』。著者は経済の専門家で、過去に『ビットコイン・スタンダード』を書いたことで有名な人物だ。『ビットコイン・スタンダード』は、これまでの人類の貨幣史を1から説明しつつ、なぜビットコインが貨幣史における特異点なのかを解き明かした。この本を読んだときから、僕は著者の知識量に恐れ入っていた。その著者が、経済の原則そのものについて語ったのが本書『Principles of Economics』だ。
本書の特徴はオーストリア学派の見解に基づいて経済が解説されていることだ。この点が貴重だ。経済学の本というと、ケインズ経済学(および、その分派)が主流で、あとはせいぜいマネタリズム理論しかない(MMTは宗教なので論外)。しかし、現実の社会状況を見たとき、ケインズ経済学もマネタリズム理論も、どちらも誤っていることはもはや明白となってきた。そこで注目すべきはオーストリア学派の経済学なのだが、残念なことに、日本にはこの学派の教科書がまったくない。そもそも『Principles of Economics』は刊行されたばかりなので、邦訳されるとしても数年後だろう。よって、英語で書かれたものを読むことにした。
最初は英語が読めるのか不安だったが、Kindleの翻訳機能を使えばだいたいの意味はわかった(ちなみに僕はなんらかの翻訳装置がなければ英語は読めない)。Kindleの翻訳は、一度にせいぜい1ページ分くらいしか翻訳できないので、読書のペースは遅くなる。しかしそれでも、本書がもたらしてくれる知識は非常に価値があると感じている。願わくばこの本が、世界各国で経済のスタンダード教科書になりますように。