先月の20日頃にインフルエンザに罹患してから2週間以上が経過した。元気になった、とは言えない。もちろん体調的にはほぼ治っている。未だ咳は出るが、軽い後遺症に過ぎない。それよりも問題なのは、メンタルが不調になってしまったことだ。気分の落ち込みが激しい。虚無的になっている。それがつらい。気合いを入れれば治るというものでもないので、今はあるがままを受け入れるしかない。生活リズムを維持することに専念しよう。
それはそうと、インフルエンザで発熱していたときは会社を休んでいたわけだが、そのときに『イカゲーム』という韓国ドラマを見た。2年くらい前にNetflixのオリジナルドラマとして制作され、大ヒットした作品だ。当時は視聴する気分ではなかったが、熱がおさまってきた際に、暇つぶしの一環で視聴することにした。これが予想外に面白かった。面白いという評判は聞いていたのだが、これほどとは思わなかった。
『イカゲーム』はいわゆる「デスゲームもの」と呼ばれるジャンルだ。このジャンルは生死をかけた理不尽なゲームを、主人公が知恵を駆使して乗り越えたり、あるいはライバルを駆け引きで出し抜いたりするシーンが往々にして人気の秘訣である。が、実のところ『イカゲーム』はそういった要素は少ない。主人公はお人好しなので他者を出し抜いたりはしないし、知恵を駆使する場面も第2のゲームくらいだ(そのかわり、主人公以外の人物が知恵を駆使したり、他者を出し抜いたりする)。
しかし、この作品は間違いなく面白い。登場人物の心理描写が丁寧なのもあるが、一番の特色は、やはり映像センスの良さだ。全体的に、はっきりとした色合いが使われており、見る者に無言のメッセージを叩きつけている。実写ドラマであることを最大限に活かした作りで、この辺が、その他の漫画原作のデスゲーム系映像作品とは一線を画している。ストーリーも、後の展開を暗示させる伏線を散りばめており、唐突感やご都合主義を感じさせない丁寧さがある。
現在、シーズン2を制作中とのことらしいが、とても楽しみである。この作品を視聴するチャンスができたことが、インフルエンザにかかって数少ない良かったことだった。